【茅ヶ崎市教育委員会様】安全と「ゆとり」を両立。ICT活用で教員の創造性を高める。
公立小中学校32校、約18,000名の児童生徒、約1,200名の教職員を抱える神奈川県茅ヶ崎市。同市教育委員会では、学校連絡・情報共有サービス「COCOO(コクー)」を導入し、連絡手段のデジタル化による業務改善を推進しています。
導入当時の「安全性を最優先した決断」と、現在の「現場の判断を尊重した運用体制」について、その背景と想いを担当者に伺いました。
【ご訪問教育委員会】
自治体名:茅ヶ崎市教育委員会
小中学校:32校
児童生徒数:約18,403名(2025年5月現在)
教職員数:約1,200名(2025年11月現在)
お話を伺った 大磯様
お話を伺った 早田様
1. 安全性を最優先。「無料の汎用フォーム」ではなくCOCOOを選んだ理由
導入が検討された当時、国からは無料の汎用的なアンケートフォーム等の活用も例示されていましたが、茅ヶ崎市はあえて専用システムの導入に踏み切りました。その最大の理由は「安全性」へのこだわりでした。
当時の担当者は、「無料のフォーム作成ツールはURLさえ分かれば誰でも入力できてしまい、生徒自身が欠席連絡を入れてしまうリスクがあります」と、なりすましの危険性を懸念しました。また、学校配付のアカウントはあくまで子ども用であり、保護者の本人確認ができないことから、「保護者に確実に登録してもらい、安全に運用するためには専用システムが不可欠でした」と振り返ります。
導入当時は、新型コロナウイルスによる欠席が多く、学校の電話回線がパンクするという緊急事態の中、市は国の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用。コストの安さよりも、子どもたちの安全と情報の信頼性を最優先し、スピード導入を実現しました。
導入当時の担当者の今井様(現 茅ヶ崎市立香川小学校)
2. 担任の抱え込みを解消。「チーム学校」での支援体制へ
導入のもう一つの狙いは、教室情報のブラックボックス化を防ぐことでした。従来のアナログな運用では、欠席理由や家庭の事情といった重要な情報が、担任の先生だけで止まってしまいがちだったからです。
担当者は、「不登校傾向のあるお子さんなどは、担任一人ではなくチームとして支援する必要があります」と語ります。COCOO導入により、管理職や養護教諭、他学年の教員もリアルタイムで欠席状況や保護者からの連絡内容を把握できるようになりました。「情報共有がスムーズになったことで、組織全体で子どもを見守る体制が整いました」と、デジタル化が「チーム学校」の実現を後押ししています。
また、教育委員会は運用の詳細について、「現場の自律」を尊重する戦略をとっています。誤送信防止のためのダブルチェックなど安全管理の基本方針は示しつつも、配信頻度や内容については学校の裁量に委ねています。担当者は、「何が保護者にとって重要な情報かは、現場である学校が一番理解しています」と説明し、学校長への信頼に基づき、情報過多を防ぎつつ、地域の実情に合った運用を可能にしています。技術的な問い合わせはベンダーのサポートデスクが解決するため、教育委員会の業務負担も最小限に抑えられています。
3. 感染症対策から庁内連携まで。広がるデータの可能性
COCOOに蓄積されるデータは、単なる欠席連絡の集計にとどまらず、庁内連携や地域連携のハブとしても活用され始めています。
例えば、ダッシュボード機能でインフルエンザ等の感染拡大状況を視覚的に把握し、その情報を庁内の児童クラブの担当部署との共有する試みを実施。「学級閉鎖になりそうなクラスの情報をいち早く児童クラブ側と共有することで、保護者が放課後の対応や就労調整をスムーズに行えるよう連携しました」と担当者は語ります。 また、公民館などの地域イベントの案内を、紙のチラシではなくデジタルデータとして学校経由で配信するケースも増えており、「学校と家庭」をつなぐツールが、次第に「地域・行政と家庭」をつなぐ情報インフラとしても機能しつつあります。
4. 生まれた時間を「教育の質」へ。さらなるDX推進の決意
COCOOの導入によって、朝の電話対応などの業務時間が削減され、先生方には時間的なゆとりが生まれつつあります。しかし、教育委員会はこの成果を単なる「業務時間の短縮」だけで終わらせるつもりはありません。
担当者は、文部科学省が示す働き方改革の目的に触れながら、「生まれた時間は、教員自らの授業研究や教材研究などに充ててほしい」とその想いを語ります。さらに、学校活動の中だけでなく、学校以外での学びも通じて「教員自身の人間性や創造性を高めてもらうこと」を期待しています。先生方が豊かになることが、最終的に担当している子どもたちに対する「効果的な教育活動」として還元されると信じているからです。
また、今後の展望についても、「教育DXを推進していかなければならない」と力を込めます。今後ますます進展するICT技術を効果的に活用することで、「子どもたちへの教育を今よりも、更によりよいものへ変革させていきたい」と、単なるツールの導入にとどまらない、本質的な教育改革への意欲を見せています。
茅ヶ崎市立鶴が台中学校の生徒の作品
5. まとめ
茅ヶ崎市教育委員会の事例は、DXにおいて「何を重視するか」の重要性を示しています。
導入時はコストよりも「安全性」を優先し、運用時は管理統制よりも「現場の自律」を信頼する。そして、効率化によって生まれた時間を、単に「楽にする」ためだけでなく、先生方の創造性を高め、子どもたちへの教育をより良く変革するために再投資する。
この「安全・信頼・教育の質の向上」という一貫した姿勢こそが、教職員の負担軽減と子どもたちの成長を両立させる、持続可能な学校DXの鍵と言えるでしょう。
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